スピード重視!売上とキャッシュの推移を手早く見たい!クリニック院長の要望に応えるためのテクニック

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更新日時:2024/02/29 12:16

【この記事のサマリ】

どんな会社?
  • 開業したてのクリニック
何に困っていた?
  • 経営に携わるのは初めての院長。売上の状況やキャッシュフローをこまめに確認したい。
freeeをどう使った?
  • 独自の「口座」機能と「自動登録ルール」の組み合わせで収入に関する記帳を大幅に自動化。
  • 品目で売上の内訳を見える化。
  • 借入金の情報は借入金管理アプリに保存。いつでもすぐに見られるように
結果どうなった?
  • 毎月翌月末に月次決算報告するサイクルを確立 。
  • 院長がいつでもfreee会計を見られるように。

freee認定アドバイザーの澤本さん(税理士法人横須賀・久保田)は、ある医師から開業支援を頼まれました。経営経験のない院長に伴走しその運営を軌道に乗せることに成功します。澤本さんが取った策とはどんなものだったのでしょうか?話を伺いました。


わかりやすい説明を求める開業医に応えて​​

――freee会計導入に至った経緯を教えてください。

澤本さん(以下、澤本):ある整形外科の院長から、開業に伴う会計や税務の支援をしてほしいとご依頼いただいたのが発端です。クリニックの経営に集中したいので記帳代行を受けてもらえる会計事務所を中心に探されていたようです。会計や税務の知識はなく、開業当初ということもありこまめに経営状況を、特に売上とキャッシュフローはこまめに確認したいとの希望でしたので、連携・自動化が得意なfreee会計を使えば院長のご要望に応えることができそうだと考えました。

――具体的にはどんな支援を行ったのでしょうか?

澤本:freee会計には様々な機能があり記帳方法もいくつか考えられますが、ご要望であるリアルタイム性を重視して業務を設計しました。銀行口座・クレジットカードの記帳については全て連携していただくことで資料回収のステップを省くことができるうえ、資料の到着を待たずいつでも記帳できるためリアルタイム化につながりました。また自動登録ルールによって記帳作業の省力化もできました。

設計の中で迷ったのは収入の登録です。freee会計では収入が発生したら「未決済」の取引を登録し、入金があったタイミングで未決済取引と紐づけて「消込」する使い方が基本です。しかしながら医業の場合は、入金元が窓口での現金だけでなく健康保険、市区町村など多岐にわたるうえ翌月に修正が入ることもよくあります。このすべてをfreee会計の未決済取引で管理するのは現実的ではありません。記帳・確認作業に時間をそれなりに要してしまい、院長への報告もその分遅くなってしまいます。

そこで、院長が本当に見たいのは何なのかを改めて考えなおしました。そもそも窓口現金以外の入金は予定も含めレセコンで確認することができますし、入金漏れ・遅れが発生することもほとんどないため、取引先別の債権管理はfreee会計でする必要はないのです。そうであれば「未決済」取引を敢えて使わないことで効率化できるのではないかと考えました。​

口座と自動登録ルールで収入に関する記帳作業をほぼ自動化

私が着目したのはfreee会計の「口座」です。普段は銀行口座やクレジットカードを口座として使いますが、任意の科目も口座として登録することができます。今回は「売掛金口座」という口座を作ることにしました。(作成の手順はこちら

使い方のポイントは二つです。

  • 1か月分の売上を種類ごとにそれぞれ取引として登録。その際、決済ステータスは「決済済」、決済口座を「売掛金口座」とする
      → 売掛金 / 売上 の仕訳が登録される
  • 健康保険組合や患者負担分の入金を全て自動登録ルールで「売掛金口座」へ「口座振替」する
      → 預金 / 売掛金 の仕訳が登録される​

こうすることで、収入に関する記帳に手間はほとんどかからなくなります。

ただし、口座振替では取引先や品目をつけることができないため、副作用としてfreee会計上では期中の売掛金の内訳管理はできなくなります。この点を院長にも了承いただいたうえで、リアルタイム性を優先して「売掛金口座」を使用する方法をとることにしました。

品目タグを丁寧に付けることで売上の内訳・推移の分析を可能に

一方で、院長が気にされている売上の推移を分析できるようにするために、売上高の内訳は丁寧に品目をつけて登録しました。特に、自分で価格設定できる自由診療の売上推移は、院長が戦略を考える際に最も見たいポイントです。

レセコンから出力された診療項目を取引登録時に品目として付与することで、月次推移表や収益レポートで品目別の推移を見ることができるようにしました。ここは院長にとても喜ばれました。

Point!
  • 売掛金は「口座」で管理にすることで、収入の記帳はほぼ自動化。
  • 売上高の内訳は品目を付与。院長がいつでもfreee会計で見られるように。

細かい点ですが、紙証憑の回収も少し工夫をしています。証憑を受け取ってから記帳する際にその内訳など確認をしていると、お互いに手間がかかりますし、何よりやり取りで待ちが発生する分報告も遅くなってしまいます。科目別のタブをつけたインデックスファイルをこちらで用意し、格納時に分けていただくことで、確認の手間も各段に減らすことができます。早く報告できるようにするため、という理由をご説明したところ快く受け入れて下さりました。

このように、月次決算報告を早くすることにとことんこだわって業務設計をした結果、毎月翌月末に月次決算報告をする形が実現できています。10月の決算報告を11月末にする、という具合です。毎月の流れは10日ごろにレセコンが締まり、15日ごろには諸々の資料を送っていただき、1週間ほどでfreee会計での月次決算作業を終えて月末頃の面談で報告するというサイクルです。鮮度の高い会計報告を見ることができ、院長も喜んでいただいています。スピード重視に振り切った業務設計で顧問先のニーズに応えることができた事例だと思います。

借入金管理アプリの活用

――他にも工夫した点があれば教えてください。

澤本:借入金についても記帳の手間を省くコツがあります。それは借入金管理アプリです。返済予定をあらかじめ登録しておけば、返済の仕訳を「未決済取引」として自動生成してくれるため、記帳の際に元本と金利の内訳を確認する必要がありません。また、今後数年の返済予定もグラフで確認でき、顧問先の社長から借入に関する相談を受けた場合にも現状をすぐ確認できます。

最初の設定は少し手間はかかりますが、その後数年に渡って手間が省けるため重宝しています。今回のような医業の顧問先さまに限らず私はよく利用しています。

借入金管理アプリの画面キャプチャ。数年先までの残債と返済額をグラフで確認できる

――今回のfreee会計導入で、他に得られた効果はありましたか?

澤本:クリニック側にとっても、私たちの事務所側にとってもメリットがあります。クリニック側については、月に一度報告する際だけでなく、院長自身が気になったときにいつでも自分のパソコンで経営状況を確認することができるようになりました。最新の資金繰りレポートや月次推移表をいつでも見られるのは喜んでいただけたポイントです。


freee会計導入後は、翌月末までに月次決算を院長が確認でき、さらに院長が見たい売上の内訳分析も見られるようになりました。これを可能にしたのはfreee会計の柔軟さと、それを把握していた澤本さん自身の知識量だと言えそうです。澤本さんと院長の二人三脚はこれからも歩みを進めていきます。



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